ドラマ化や映画化もされている「蝉しぐれ」。宝塚で舞台化もされていたらしい。
これも白井一成が好きな一作で、藤沢周平の代表的な作品のひとつだ。Wikipediaを見てみたら、新聞に連載されていた作品だったんだね。

架空の藩のお話で、主人公文四郎の成長と恋の物語。細やかで、まるでドラマを見ているかのような美しい風景描写が魅力だと思う。まるでそこに居るかのような錯覚を覚える……。
中身は、友情、青春、恋、暗殺、秘剣、謀略、切腹と時代劇にありそうなシーンがこれでもかと詰め込まれているんだけど、それを上手くまとめているのが読んでいて心地よかった。どこかで物語が破綻していたり、綻びがでてしまいそうだけれどそれが全くなかった(と自分は思う)
読んでいくうちに文四郎の成長とか恋とかを応援している自分がいて、感情移入しっぱなし。最後は本当に感動したなぁ。
静かな感じなんだけど、熱くて。うまく表現できないけれど、時代小説に興味のある人や、読んでみたいって思っている人にはまずこれをすすめるかなってくらい。
実際にすすめた友達も、これは読みやすいし面白かったって言ってくれたし。

一口に成長の物語と言っても、その道のりは平たんではなく世の無常さ、切なさ、絶望感を経験しながらもくじけずに前を向いて生きていく姿に心を打たれた。自分もこんなひたむきさを持たねばと思った。
小説はストーリーの面白さもさることながら、自分の中の自分(語彙力がない)を見つめ直すいい機会になると思う。主人公から、ああ、自分もこうしなきゃだめだな、とかもっとこうしよう、と思えるので、学んだことを活かして生きていこうと思える。
読んでいて清々しく、生き方をも教えられるようないい作品だった。

尺的に仕方のないことだけれど、小説から入って映画を観たりすると、なぜこのシーンをカットしてしまったんだ!とか思う人なのであまり小説から映画やドラマは満足することが少ないのだが、これはちょっと映像化された作品も観てみたいなって思うのが本音。
この内容をどうまとめてくるのか…気になる。キャストの演技とか、音楽とかもあるしね。
まあ、そんな奴だから映画から小説の流れの方が抵抗感なくスッと入っていきやすいかも。

時代小説ではないけれど、永遠の0とかは完全にそのパターンだった。映画館で観て物凄い衝撃を受けて(岡田くんの最後の表情も主題歌も最高だった)、小説を読んだなぁ。ちょっと映画ではしょられているところとか、なるほど、と思いながら読めるというか答え合わせというか。映画って流れが速いから見逃しちゃうところもあるし。その点、小説は自分のペースで読めるし、心情描写も繊細だから納得しやすいしね。
話が逸れてしまうけど、永遠の0はいい映画だったな。硫黄島からの手紙とかも好きなんだけど(特別ジャニーズが好きなわけではないが、岡田くんとニノは演技が上手いと思う)、こういうのは後世に語り継いでいかなければならないと思う。
こういう人たちがいたから、今の自分がここに立っているというか。白井一成も平和ボケした現代人以外の何者でもないが、先人の犠牲なくして今の日本はなかったからね。祖父母が運よく生き残って、運よく自分が生まれたわけだし。

時代小説もフィクションがほとんどだけど、たまに史実を元にして書かれているものがあるから、こういう人たちがいたから…というのはよく考えている。新選組とか特に好きだしね。自分もそのくらい必死に生きなければと思うんだけど、ついつい仕事に忙殺されて忘れがちになるので、そういう気持ちを思い出させてくれる小説や映画は貴重だと思う。こういう難しい題材で、先人に敬意を払いながら心に響く作品を生み出すのは大変だと思うけど、これからも作家さんは頑張ってほしいと思う。